一 番 弟 子 5年前花源面村に達杓という心優しい男がいました。 そして、今も良い米を作っているのです。その達杓は、見た目は人間ですが、 実は神様なのです。間違って神界からすべり落ちて来たのです。そんな方ですので、 この人間界に来てもそれはそれは働き者で村のみんなにも尊敬され愛されておりました。 そんなある年、達杓23歳の時日照りが続き村人は、たいそう困りました。 達杓は、村人に『日照り続きで不作無し』と昔から言いますから『大丈夫ですよ』と みんなを励ましていましたが、余りの水不足に達杓も大変心配になって来ました。 村の長老も『後一週間降らなければ、全滅かもしれない』と言いました。 しかしその夜、ビールを飲み過ぎて寝込んでしまった達杓は、不思議な夢を見ました。 達杓の田んぼの少し上の丘に何百本ものビールが積み上げられていました。 その場所に行くとビールは消えましたが、その場所は水がうっすらと湧いていました。 翌朝、達杓は、何か嬉しい気分で目覚めました。そしてその場所に行ってみました。 でも水は、湧いていません。 何となくその場所に座ってみましたが、 暑い太陽が照りつけているだけで、三分と経たず立ち上がりました。 しかし、その時ある考えが浮かんでいました。 2時間後ショベルカーを借りてその場所を掘り始めました。 すると3m程掘っただけで水が湧き出ました。それをポンプを使って自分の田んぼ より150mも高い位置にある丘の頂上の田んぼまでホースを繋いで水を上げました。 そして村中に水が出て来た事を告げ水路を開け水を分けました。 村中の田んぼに十分な水を満たした頃に、隣村からも水を求められ ドラム缶に入れてトラックで運んだりホースを繋いだりして水をみんなに届けました。 そして近隣の村々まで十分に水が行き渡り、その年は、達杓の村も近隣の村々も 大豊作となりました。その上、その年は結局9月半ばまで雨が降らず、 達杓様様とみんな喜んでくれました。 しかし、達杓はショベルカーやポンプ、ホースそして燃料代と大変費用がかかりました。 それで達杓は、収穫感謝の祭りの時に村びとや隣村の人々に実費分だけをお願いしました。 するとみんな口々に『そりゃそうだ。こんなにお世話になったのだから』と言って 笑顔と感謝の言葉で了解してくれました。しかし、1ヶ月経っても2ヶ月経っても ほんの一握りの人しかお金を持って来ません。 年末に、『もうもらえないな』と諦めながらも納得できず、 首をかしげながら達杓はまたいつもの様にビールを飲んで寝ました。 すると夢に神界の先生が現れ夏からいままでの事を解りやすく説明して下さいました。 『 達杓が、ふつうの人間ならば、 水をやる時点で契約を交わし一円の損もしてないどころか大儲けをしていましたよ。 しかし、達杓は、神界の神なので困っている人に十分な愛情を与える。 そして、忘れ去られる。でもそれでいいんです。神界の神はいつだって与えるだけで 与えた後は忘れ去られるんです。なぜって今達杓がいる所は人間界だからだよ。 達杓は、神界にいても人間界にいても神様だから、神界にいる時同様に与え続けるだけで その後は 忘れ去られるんだよ。神界でもそうだったでしょ。 そう言って神界の先生は、帰ろうとされましたが振り向きざまにまた、言われました。 あっ、それからほんの一握りの人は、感謝のお礼を持って来たでしょ。 人間界にも達杓程でないにしても神がいるっていうことだよ。』 翌朝目覚めた達杓は、漢国神社に行って手を合わせていました。 合 掌。